STEP BY STEP
花を咲かせましょう
これは私の友達の話。
明るくてたまにうるさいくらいで、人前で泣いたりしない頑固なとこもある可愛い友達。
結香(ゆか)、そう… 彼女の話。
誰にも“クセ”があると思う。
それは見て気づくもの、触れてみて気づくもの、それは隠されている。
中には自分で気づく者、気づかない者がいる。
十人十色。
私もその一人。
監察する事が好き。
友達の結香には好きな人がいる。
よくある話、イケてる同級生、イケてる後輩、イケてる先輩に憧れて好きになる。
結香が好きなのはイケてる後輩。
しかも私のご近所さんで、真史(まさし)君。
だから結香には縁があると思う。
結香に聞いてみた、告白しないの?って。
出来るわけない、そう笑顔で言った。
出来るわけない、その理由は何? そう聞いた。
「 だって、私なんて女っていう氷山の一角にすぎないんだよ 」
あまりに大きい例えで、逆に言い返してみた。
「 結香はエベレストに咲く奇跡の花だよ 」
結香は、アハハッと笑いながら抱きついて、そうかもしれないねと言った。
そんな奇跡の花になるために、何かをするのではなく、周りの女子に混じって同じように見つめて“好き”を溜め込んでいる。
吐き出してしまえばいいのに、そう思う。
好き……
この一言を吐き出さないかぎり、心は氷山のままだ。
奇跡の花になるなら、なりたいなら……
見つけてもらわなきゃ、ダメ。
ダメだよ。
私の家に遊びに来るから一緒に下校。
偶然にも、結香の好きな人が友達と何やら話ながら歩いていた。
門を出ても 結香の瞳は真史君だけを見つめ追っている。
背中をトン、と押してあげたい。
この手で軽く押せば一歩が踏み出せるかも知れない、だから……
だから、私は見つけてあげてとの思いを込めて背中を押した。
でも、ただ一歩出ただけで踏み止まる結香。
なんで……
一歩が出ても声の一歩がなかったから。
結香……
真史君に振り向いてもらうチャンスだよ、結香……
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