STEP BY STEP
あまりに簡単な一押し。
たくさんの女子が真史君に振り向いてほしいと願う中で、私は友達の結香だけに振り向いてほしいと願ってる。
だから……
「 …先輩、大丈夫?」
「 あ、あ~ 大丈夫っ 平気!なんて事ないから 」
「 真史君が好きなだけよね?」
「 そう!好きなだけよ、うん 」
私の声の人押し。
結香は口を手で覆い隠した。
釣られた結香が言ったのは真史君が聞いて驚いて、当然、半信半疑だろう。
「 先輩…… 好きな人って、俺?」
一歩後退の結香。
「 先輩?」
二歩目後退。
奇跡の花を見つけてもらえたのに、後退してくなんて、ダメ。
「 結香、氷山の一角で終わりたい?」
溶けてしまえば大地に…
でも結香は、その大地から芽吹く花。
「 先輩、俺でいいの?後輩の俺でいいの?」
結香……
あなたの好きな人が、聞いてるよ。
もう二度と、こんな風に恋できないかもしれないよ。
笑って結香、私に見せる笑顔で言って。
「 私…… 真史君が、好きっ 」
「 先輩… 」
笑顔で言って結香の顔には涙が。
友達として、私は安心した。
だから、また結香の背中を押した。
二歩後退した結香の背中を…… 思いきり。
「 受け止めたんだから、結香を離さないでね 」
真史君の腕に抱き止められ、私に振り向く結香の唇が、言ってた。
“ありがとう”
私にはわかった。
結香と出会った日から変わらない笑顔でいてくれた。
友達だから、真史君に取られても構わない。
友達の幸せは、私の幸せの一部。
私は結香を見てきた。
友達になってからずっと……
奇跡の花は結香。
次は私の恋を芽吹かせる。
結香の笑顔には敵わないが、結香のように、私も……
誰かの花にりたいから。
完。