メトロの中は、近過ぎです!
午後になって、ようやく前田ホームさんと連絡がついて、来週早々の月曜日11時にアポが取れた。

良かった。なんとか会ってくれそうで。
足取り軽くオフィスに戻って来れたのは、そのおかげかもしれない。

営業職はほとんど自営業みたなもの。
ホワイトボードに『外出・○○設計』って書いておけば、別に外で何をしていようと何も言われない。

ただ、売り上げが上がらないだけっていう切ない結果が待っているから辛い。

デスクに座って事務作業に集中してたら、左側に大きな影が迫ってきた。
ビックリして顔を上げると、戸田君で
なんだかニヤニヤして嬉しそうだ。

「みなさん、今週の金曜日空けといてください。大野課代の歓迎会をやります」
「大野かだい?」
「はい。課長代理のことそう言うらしいです」
「へー」

変な呼び方。

「誰が来るの?」

沙也香ちゃんは戸田君には冷たい。

「人形町支社全員です」

人形町支社は3階建てのビルで、私たち営業3課は3階にある。
2階には積算部という、いまだに何をやっているのか分からない部があって、1番下の階は駐車場と倉庫があるだけの古ぼけた小さな雑居ビル。

エレベーターはあるけど、ガタガタ言ってて途中で止まりそうで怖いくらいの小ささ。
銀座にある本社とは、建物も中にいる人達も、全く雰囲気が違う。

「下の人たちも一緒なの?」

沙也香ちゃんは積算部の人が一緒なのはイヤそうだけど、私はなんとも思わない。
むしろ素敵な川端主任がいるから、話してみたいとも思う。

でも残念ながら川端主任は既婚者だ。
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