メトロの中は、近過ぎです!
ガンガンガン

その時、倉庫の扉を叩く音がした。

主任は私の口を手で押さえて身動き一つしない。

ガチャガチャとドアノブを回す音がしている。

早く!
早く。誰か入ってきて!

だけど、鍵がかかっているのか、一向にドアが開く音がしない。

外の音が止む。

誰もこの様子に気が付かなかったんだ。

主任が薄ら笑いを浮かべてこっちを見るから、全身が震えだす。

「震えてるね、可愛いな。こんなところでは誰かに見つかってしまうよね」

そう言うと主任は私の首に両手をかけ、軽く力を入れた。
首が締まって息ができない。

「このこと、二人だけの秘密にしようね。分かった?」

私が頷いたのを確認すると、その手は両肩に移動して

「ふっ」

両眼を見開いたままの私を笑い、手は更に下に下がっていく。

最後に腰をしっかりと持たれ、自分の腰を密着させてきた。

そしてゆっくりと私から距離を取って笑う主任。

「今度改めて二人で会おう」

主任は立ち去って行った。

もう二度と会いたくない。
顔も見たくない。

壁によりかかったままズルズルと落ちていった。
もう全身に力が入らない。
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