メトロの中は、近過ぎです!
座っていても震えが止まらない。

「あ、あぁっ…」

今頃になって出てきた声は、大量の涙をこぼさせる。
胸元を押さえて、ただ泣くことしかできない。
恐怖と痛みと、なんで?っていう疑問と、悲しくて悲しくて仕方がない。

どれくらいそうしてたんだろう。

感覚がなくなった私の耳に、
カチャ、ギー
再び誰かが入ってくる音がする。

その音に全身が固まる。
主任が戻って来たに違いない。

逃げなきゃ…

慌てて立とうとした。
でも足に力が入らない。
足音がどんどん近付いてくる。
身体と歯が異常な速度で震えだす。

もうすぐそこまで近づいた足音。

身体の震えが最大になって、ぎゅっと目を閉じた。

「おまえ…」

その声は、大野さん。
私の姿を見て眼を見開いている。

こんな格好、見られたくなかった。
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