メトロの中は、近過ぎです!
大野さんはもう一度ドアを閉めると、私の手を握り、

「大丈夫だから。安心しろ」

何度も何度もそう言ってくれるのに、それでも私の涙は止まってくれない。

「鞄とってくるだけだから。おまえの分も。すぐに戻る。鍵かけてれば誰も開けられないから」

心配してくれてる大野さんの声に、これ以上の迷惑はかけられないと手を離すと、大野さんは車を降りてしまった。

鍵をかける音がして、駐車場を走る大野さんの背中が小さくなっていく。

一人だと不安になる。
またすぐに捕まってしまうんじゃないかって思うと、怖くてしょうがない。

助手席の足元の狭いスペースに潜り込んで姿を隠した。息も殺してジッと待つ。

大野さん、早く戻ってきて


ピピ、カチャ。

車の鍵を開ける音がした。
だけど、ドアは開かない。

怖くなってそっと顔を出して確認すると、
ガチャッとドアが開いて大野さんが運転席に入ってきた。

「焦った。どっか行ったかと思った」

その手には私のバッグ。
どっと安心感が湧いてきて、

「うっ…ううっ…」

バッグを抱きしめてまた泣いてしまった。

それが収まるのを待って、大野さんが囁いた。

「車を出そう。座って」
< 104 / 309 >

この作品をシェア

pagetop