メトロの中は、近過ぎです!
ガバっとドアが開かれて、大野さんがさっさと中に入ってくる。
グレーのVネックのロンTにジーンズ姿の大野さんは、普段のスーツ姿よりも幼く見える。
髪もセットされてないからかな…
そんなことを思いながら、後ろから着いていく。

「おまえ、本当に髪ボサボサ」

ククっと笑って、当り前のようにソファーに座っている。

「どうしたんですか?」
「…ドライブしてた」

こんな朝早い時間に?
逗子から?

たぶん普通に計算して4時間くらいかかるんじゃないだろうか…
ってことは何時に出たの?

「はい、メロン。どうせなんも食べてないんだろう?」

そう言えば、昨日から何も食べていないことに気づいた。
でも、食欲も湧かない…

「もらいものだから気にすんな」
「ありがとうございます」

なんだかわからないうちに受け取ってしまった。

「あとこれも」

渡されたのは紙袋に入ったたくさんのパン。
焼きたてのいい匂いがする。

「俺、コーヒーね」
「え?」

大野さんはソファーにごろりと横になっている。

「食べるんですか?」
「それ一人で食う気?」

逆に聞かれてしまった。
確かに一人で食べるには多すぎる量が入っている。
良く見ると私が好きなフランスパン系もあって……食べたくなってきた。
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