メトロの中は、近過ぎです!
そのまま私は寝てしまったらしい、気が付くとベッドの上にいた。

起き上がって部屋を見渡すと、大野さんがソファーで寝ている。
そっと毛布をかけて覗き込むと、眉間にシワを寄せたまま寝ている。

ずいぶん大野さんに迷惑かけてしまった。
たぶん他の人には秘密にして、自分だけで私のフォローをしてくれたんだろうな。
そういう人だ。
わざわざ部屋まで来て……

ソファーの横にくっついて座った。

他の人でも大野さんはここまでするんだろうか
するんだろうな。

胸がぎゅーっとしめつけられる。

ダメだ!

このままだと危険だと、私の中の警報が鳴り響いている。

離れよう

そう思った途端、大野さんの携帯のバイブが鳴りだし、パチリと目覚めた携帯の持ち主と目が合う。
大野さんは立ち上がり、寝室に移動しながら携帯に出た。

「分かりました。ご尽力いただき本当にありがとうございました。御恩は忘れません」

そんな内容が聞こえてくる。

「契約決まったの?」
「まあ、そんなとこかな」
「おめでとうございます」
「あぁ」

大野さんが黙ったまま私を見下ろしている。
何か言いたそうだけど、ドキドキがうるさくて何も聞けない。

「出るか?外に」
「え?」
「部屋に閉じこもってばかりじゃダメだろう」

急に背伸びをした後、軽く身支度を整えだした。

「私はいいよ。こんな格好だし…」
「待ってるから。準備してこいよ」

これ以上一緒にいない方がいい気がする。

大野さんと視線を合わせないようにしていると、

「じゃさ、コインゲームで決めようぜ」

機嫌良さそうにジーンズのポケットを探りだした。
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