メトロの中は、近過ぎです!
「それ、勝てる気しないんだけど…」
「何言ってんだよ。二分の一の確率だろ?」

ニヤリと笑って100円玉を渡される。

「大野さんがやってよ」

100円玉を返そうとしたら、

「それじゃ面白くないんだよ」

と理不尽なことを言って拒否された。

しぶしぶ100円玉を握る。

今度こそ絶対にばれませんように……

私は左手に100円玉を入れた。

「いいよ」

振り向いた大野さんが真剣に悩んでいる。

今回はいけるかも…

そう思った瞬間だった。

「こっち」

にやりと笑って左手の甲を叩かれた。

「絶対ズルしてるでしょう?」

「してねーよ」

そう言いながら嬉しそうに立ち上がって、キッチンに向かっていった。


でも、私はまだ左手を開いていない。




だけど、この人は結果を知っている……


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