メトロの中は、近過ぎです!
そんなに広くない居酒屋『白虎』の2階は、人形町支社の人たちであふれかえっていた。
忘年会程度しか参加しない、積算部の女の子たちまで来ている。

狙いはもちろん大野課代でしょう?

その大野課代の隣を陣取っているのは、やっぱり伊藤チーフ。
私もさりげなくチーフの隣に座ってみた。

「大野課代。おいくつなんですか?」

チーフは大野課代のコップにせっせとビールをついでいく。

大野課代はそんなチーフの色仕掛けにも動じないで、爽やかな笑みを浮かべて答えている。

「26歳です」

「あっ!一緒です!」

うっかり大声を出してしまった。

後ろの席に座っていた川端主任にまで聞こえたようで、
「真帆ちゃん、もうそんな歳になったんだ」
なんて言われてしまう。

そんな私の声はしっかりスルーして、
大野課代の反対隣に陣取っている沙也香ちゃんが、しっかりその胸の谷間をアピールしながら大野課代を真正面に見据えた。

「大野課代、下のお名前はなんておっしゃるんですか?」

沙也香ちゃんの甘い声に、その隣に座っている戸田君がビールを吹きだした。

「はるとです。大きいに飛翔の翔で大翔」

え?!
はると?
はると君?!
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