メトロの中は、近過ぎです!
後ろでカタンと音がして、3人で振り返ると、大野さんが3課の自分のデスクに戻ってきていた。

「お疲れ様です」

明るい声なのは伊藤チーフだけだ。

「戸田。悪いな。俺がなんとかするから」

しまった。聞かれてたんだ。

「あ、いえ。大野さんのことではないんです」

大野さんは無言で机の上の書類をまとめている。
戸田君が大野さんのデスクにかけていった。

「大野さん。俺、大野さんについていきます。だからなんでも俺に言ってください」

それを見た私もかけよる。

「私もです」

大野さんが私たちの方を見た。
一瞬だけ触れた視線に胸の奥が落ち着かない。

「戸田。ちょっとこっち手伝って」

チーフの声がする。

「なんで今なんすか?」

戸田君は戻っていき、私は心の中でチーフに感謝した。

「大野さん。いろいろありがとうございました。課長から聞きました。あの、ご迷惑をおかけして、すみません」
「別にたいしたことしてねーよ」

言いたいことはいろいろあったのに、それ以上言葉が続かず席に戻ろうとした。

「佐々木。俺、今度ひ…」
「大野君!お待たせ」

麻紀さんの登場で大野さんが何を言おうとしたのか分からなかった。
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