メトロの中は、近過ぎです!
「ハラマキー。あんたやりすぎると痛い目みるよー」

伊藤チーフが後ろから叫んでいる。

「あら、伊藤ちゃん。いたの?」

麻紀さんはニッコリ応戦している。

この二人、お互い嫌ってるけど、本当は仲良いのかと思ってしまう。

「伊藤ちゃん。ゆっくりお話ししたいけど、今ちょっと忙しくて…ね」

最後の『ね』は、大野さんに向けて言う麻紀さん。
二人しか分からない合図らしい。

「大野君。急がないと閉まっちゃうよ。今日はキッチン用品揃えるんでしょう?」

麻紀さんが大野さんの腕をとる。

キッチン用品?
新規事業部で扱うのかな。

「原田さん。だから、いいですって。俺、一人で行けますよ」
「遠慮しないでー。私が副島課長に頼まれてるんだから」

周りの人間を置いてけぼりにして、完全に二人の世界に入っている。
そんな状況に麻紀さんが気付いて、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

「あれー。まだ皆さん、知らないのかなー。大野君、引っ越すこと言ってないの?」
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