メトロの中は、近過ぎです！

「大野さん、引っ越すんですか？」

いち早く戸田君が反応する。
はぁ、とため息をはいたあと、大野さんが答えた。

「まぁ、実家が遠いからな」
「そうなの。恵比寿のマンションよ」

なぜか得意気に麻紀さんが答える。

「なんであんたが答えるのよ」

伊藤チーフも嫌そうだ。

「だって、私が勧めたから…ね？」
「え？」
「は？」

同時に大野さんを見た。

なんだ。そういうことか……
麻紀さんが勧めたマンションに、麻紀さんと揃えるキッチン用品って……
ふーん。そういうことなんだ。

冷めた目で二人を見てしまう。

「ねぇ、大野君。新しい家で４課のみんなを呼んで親睦会やらない？引っ越しのお披露目も兼ねて、ね？どう？」

大野さんも固まって声が出ないようだ。

「佐々木ちゃん、戸田君。来てくれる？」

まるで自分の家に誘っているみたい。麻紀さんの目が輝いている。

「原田さん。勝手に…」
「大野君。大事なことよ。大野君はこれから４課をまとめていかなきゃいけないでしょう？ちょうどいいじゃない。みんなとの信頼関係がないと、良い仕事ができないわよ」

こういうことに関しての麻紀さんはすごい。
３課にいたときも仕事はできる人なのに、仕事には興味がないのが残念な人。

大野さんは何も言い返さない。

なんで言いなりなの？