メトロの中は、近過ぎです!
テーブルの上に広がる液体。
倉庫でのあの景色がよみがえる。
身体がぶるりと震えた。


「南さん!」
「主任!」
「すいませーん。台拭きー」

騒々しくなったテーブル。
南主任がじっと私を見ていた。

「悪かったな」
「いいえ……」
「俺のミスだ」

「佐々木。ごめんね」

伊藤チーフまで謝っている。

「大丈夫です」
「あいつもまだ本社にいた頃は普通だったんだ。俺たちは同期でな。一緒に飲みにも行ってたんだよ」

南主任がポツリポツリと語る。

「結婚してからあいつは変わったんだ。でもそのうちに元に戻ると思ってたんだよ。悪かったな、佐々木。大野も……」

誰も何も言わなかった。

「許せないですよ」

大野さんが今にもグラスを握りつぶしそうな勢いで言った。

みんなが無言になる。

「もう、本当に、大丈夫です」

私の声はかすれていたけど、ニッコリ笑ってみせた。
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