メトロの中は、近過ぎです!
「そんなこと言ってんじゃない」

絶対この人負けず嫌いだ。

「アイツの態度に気付かないおまえが一番おかしいだろ」

なんでそこまで不機嫌なんですか?

「誘ってたのか?」

主任は既婚者だって言ってるじゃん

「おまえ、どーやって今まで生きてきた?」

は?
今、全否定したでしょう?
私の人生丸ごと否定しましたよね?

何なのこのおぼっちゃん。

さっきの爽やか好青は仮面ってことですか?

危うくだまされかけました!

もう何も話す気になれなくて、そのあとは浦安に着くまでずっと無言で窓の外を睨んでいた。

大野課代も何も言わずに反対側に顔を向けてる。

一瞬でもその姿に見惚れそうになったことは、なかったことにしよう。

自宅近くでタクシーを止めてもらい、
「ありがとうございました」と、一応、タクシーの中に向かって言う。

社会人だからね。
その辺の礼儀はわきまえてます。

なのに課代は何も言わない
どころか、こっちを見もしなかった。

『えっらっそーに……』
って言ってやりたかったけど、ギリギリのところで堪えた。

ただ家に帰ってもしばらくは怒りが収まらず、独り言で文句を言ったり、クッションに当たり散らしたりして紛らわせるしかなかった。
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