メトロの中は、近過ぎです!
手を引こうとしたけど、彼が腕を掴んだまま離さない。

「……」

不思議に思って見ると、彼と目が合った。

切なそうで、何かを言いたそうな目。
グッと胸が痛くなる。

彼が立ち上がると、見上げるところにその幼さの残る顔があって、私と同じ目線だったあの頃とは違うんだと改めて思った。

「お……」

そのまま腕を引かれ、倒れ込むように私は簡単に幼なじみの胸に顔をつけた。

「ちょっと、何してるのよ」

ドキドキし始めた胸を、冗談にしようと明るく言ったのに、彼の腕の力が強くなり

「……真帆」

頭の上で声がする。
小さくて切なそうな声。
彼の鼓動も早い。



やっぱり無理だ。

この気持ちを幼なじみだからと言って誤魔化せない。



「大野さん…」



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