メトロの中は、近過ぎです!
「あの…シンさん…」
「あ、バーボン飲めなかった?」
「いえ。そうじゃなくて…」
「じゃ飲んで」
「あの、話があって…」
「飲んだら聞くから…」

シンさんが私をジッと見ている。

彫刻みたいに整った顔は、無表情で、何を考えてるのか分からない。

私は飲めない洋酒を飲んだ。
途端に喉と鼻がカッと熱を持って痛くなった。

シンさんはそんな私の様子を眺めて微笑んでいる。

すごく違和感を感じる。

「シンさ……」
「マホ。シチュー美味しかった?」

シンさんが微笑んでいる。
でも、目が笑っていない。
私に話をさせないつもりだ。
はっきりとそれが分かった。

やっぱりシンさんは気が付いている。

ちゃんと謝って、許してもらうしかない。

「ごめんなさい。私と……」
「出張行ってたんだろ?」
「……はい…」
「誰と?」

今までより一段と低くなったその声に全身が震えた。

「ごめんなさ…」
「浮気してきた?」
「……」

手が震えてグラスを落としそうになる。

何も言えずに顔を上げると、シンさんは……


笑っていた。




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