メトロの中は、近過ぎです!
シンさんの表情が変わり、ものすごい強さで腕を掴まれた。
必死でその手を振り払う。
もう捕まっちゃいけないって、ただその思いで夢中で逃げた。

立ち上がり、背を向けて駆け出した瞬間、ガクンと変わった景色。
気付いた時には足元に何もなかった。

すぐに階段を踏み外してしまったと気付いた。
でももう止めようがなかった。

スローモーションのように階段の手すりが横を過ぎていく。
伸ばした手は空を切り、態勢を立て直そうとした瞬間、激しい痛みを左足と左肩に感じた。

「っ…」

それでも私の身体は止まらずに転がり続けた。


痛い…

全身に感じる強い痛み。
起き上がろうとするけど、痛くて力が入らない。

「真帆!」

大野さんの声がする。

意識が薄れていく中、大野さんが叫んでる声が聞こえたような気がした。

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