メトロの中は、近過ぎです!
「じゃあ、そろそろ行くね」

「あ、じゃあ私も…あの、本当にありがとうございました」

私がベッドから下りようとすると、さりげなく腕を支えてくれる。

そんな仕草にも大人のスマートさが溢れている。

細身のパンツにレザーのジャケット、見るからにオシャレな業界人、という感じの王子。
お知り合いになれただけでも光栄です。

「気をつけて」

そう言って末岡さんがドアノブに手をかけると、
「こちらです。どうぞー」
始めて外の世界からの音が聞こえてきた。

二人で見つめ合い、なぜだか笑った。

末岡さんがドアを開けると、ちょうどこちらに向かってくる人達が見えた。

一人は駅員さん。
もう一人は……

「大野課代…」

一気に現実に引き戻された。
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