メトロの中は、近過ぎです!
「何が食べたい?」

メニューを見たけど、私の知識では到底理解できない文字が並んでいる。

「お任せします」

精一杯落ち着いてみえるように笑顔で答えると、末岡さんも優雅に微笑んだ。

少しは大人の女らしく振る舞えている…と信じたい。

今まで飲んだことがないような美味しいワインと、見たこともないような料理が並んだテーブル。
末岡さんはあまり食べないでワインばかり飲んでいる。

私も今日はがっつかないと心に決めて、なるべく少しづつ口に運ぶ。

「小食なんだね」
「胸がいっぱいで……」

全く嘘って訳ではない。

イタリアのオペラのドラマチックな歌が流れていて、それだけで私の気分は海外旅行しているように大きくなる。

「末岡さんはモテるでしょう?」

一番聞きたかったこともサラリと聞くことができた。

「そんなことないよ。それより佐々木さんの方がモテそうだよ」

なんて言われたので、ブンブン首を横に振って否定した。

しまった。優雅に否定しなきゃだった…
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