メトロの中は、近過ぎです!
連休明けて出勤の日、久しぶりに履いたスカートとブーツ。ゆるくウエーブをかけた髪は横でまとめた。
浮かれる心を押さえて少し早めにホームへ着くと、既にシンさんはベンチに座っていて

「おはようございます」
「おはよう」

整った顔が私を見つけて優雅に微笑む。
それだけで幸せな気分になる。

「これお土産」

渡された小さな紙袋の中には、ガラス製の唐辛子が何個かついたストラップ。

「それ、魔除けなんだって」

シンさんが微笑んている。

「ありがとうございます。大事に使います」

さっそくストラップをキーホルダーに通すと、赤い実がからからと揺れた。

恋人になって初めての満員電車の中。
いつもよりも体が密着している気がする。
頬が熱くてシンさんの顔が見られない。
シンさんは明らかに私を両腕の中に抱いている。

「今日のマホ、可愛い」
耳元で囁かれて、一気に鼓動が早くなった。


プライベートが充実してくると、仕事も忙しくなる。

私だけのセオリーなのか、それから一週間はよくクライアントさんから新規の発注を受けた。

シンさんとは朝の通勤にはほとんど毎日会えていて、しばらくすると手をつないで電車に乗るようになった。
仕事の忙しいシンさんとは会社帰りには会えていないけど、今週末は会おうと言われている。
来たるべきときのためにダイエットも始めた。

そんな充実した日々を送っていたある日のことだった。
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