メトロの中は、近過ぎです!
ミーティングルームに入ってすぐに新しいクライアントさんの件を報告すると、チーフも沙也香ちゃんも自分のことのように喜んでくれた。

いいチームだなぁと思う。

「真帆さん。
大野さんって、あの大野建設の御曹司らしいですよ」

「え?」

沙也香ちゃんの突然の報告に一瞬ついていけなかった。

「大野建設って、あの?」

「はい、あの大野建設らしいです。」

「あの六本木の新しいビルの?」

「そうです。
横浜の郊外のショッピングモールも大野建設でした。」

「すごっ!
その御曹司がなんでうちに?」

その質問に答えたのは細いボールペンをまわしてた伊藤チーフ。

「武者修行だって。
大野建設の社長とうちの社長がゴルフ仲間で、息子の社会勉強を頼まれたらしいよ。」

「でもなんで本社じゃなくて3課に?」

「大人の事情ってやつでしょ。大野建設の担当の1課は知られたくない内部事情があったり、2課だって御曹司をこき使えないでしょ?」

何かと面倒な大人の事情。
それはしょうがないのだろうけど

「もしかして、またうちの課長が拾ってきたんですか?」

嬉しそうな顔で聞いてる沙也香ちゃん。

「そんな捨て犬みたいに言わなくても」

半ば冗談のつもりだったのに、

「正解。うちの課長なら断らないだろうって社長が考えたらしい」

さすが3課の課長だ。
クセあり、難ありの営業3課。
類友と言うより課長が呼び寄せてるのかも。

「へー。チーフ、情報早いですね」

「ハラマキがね。
大野さんに手を出すなとメールしてきた」
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