メトロの中は、近過ぎです!
「南、あとは頼んだぞ。俺は羽生さんに行ってくる」
「待て、北さん。俺も行く」
「課長もですか?」
「そうだ。あとの指示は南が出す。みんな頼んだぞ」

コートと鞄を手に北御門さんと課長が慌ただしく出て行こうとしていた。
課長は大野さんの後ろでふと止まると、
「大野さん。本社には内密でお願いします」
小声で言ってるけど、聞こえてますよ。

「もちろんです」
疑われたのが嫌だったのか、少し機嫌が悪そうな大野さん。
課長は気付かずに出て行ってしまった。

「おお……」
「ではまず各自急ぎの業務を終わらせるように」

大野さんに話しかけようとしたのに、南主任の指示が始まってしまった。

「佐々木と堀」
私と沙也香ちゃん。

「おまえたちは悪いが後方支援を頼む。みんなの急ぎの発注作業をやってくれないか?」
「はい」
「大野さん。田中に電話して至急戻ってくるように伝えてください」
「はい」
「戸田。今の業務が片付き次第、一階倉庫で在庫をまとめろ。大野さんも手伝いお願いします」
「はい」
「伊藤さん。俺とサンプル帳のチェックだ」
「はい」
「目ぼしい商品があったら在庫の把握、これには佐々木と堀が当たってくれ。課長から受注の連絡が取れ次第すぐに発注できるように」

次から次へと指示が出される。

「以上。何かあればすぐに上げろ」
「はい!」

全員の返事がピタリと合った。

南主任、すごい。
ミーティングルームから出るときには私たちへの役割分担は決まっていた感じがする。

それぞれがデスクに足早に戻る。

なんか…
なんていうか、この状況…

燃えるーーー!!

パンプスを脱いで室内用のミュールに履き替える。

これが私の本気モード。
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