メトロの中は、近過ぎです!
ちょうどそんなとき、課長と北御門さんが戻ってきた。

「どうだ?集められそうか?」

課長の問いに主任が答える。

「これから大野が浜松工場に廃盤になった商品の在庫を取りに行きます。それがどれくらいあるかですね…」
「え?大野さんが?」

北御門さんが大野さんを見ている。

「はい。俺、運転は得意です。それに切り札ももらいました」

そう言ってスーツの内ポケットを叩くから、つい吹きだしてしまった。

「なんだ、切り札って?」
「私のサンタの写真」

チーフが後ろから声を挟む。

「あの時の写真か?俺の分はないのか?」
「課長。セクハラですよ~」

こんな状況だっていうのに、みんな笑ってる。
いや、こんな状況だから少しのことでも楽しくなるのかも。
さすが3課のメンバー。
逆境の方が燃えるのかもしれない。

「大野。行く前にこれ食ってから行け」

課長と北御門さんはたくさんのお弁当が入ったビニール袋をテーブルに置いている。

「いただきま~す」
「田中はどうした?」
「トラック返しに行きました。ついでに他のクライアントさんのところにも寄ってくるそうです」
「さすが田中だな。余った分は田中に残しとけよ。あいつには足りないかもな」
「はーい」

決戦前の腹ごしらえ的な感じで、お弁当を選ぶ時も真剣のみんな。

そんな中、大野さんが私に近づいてきた。

「佐々木さん、悪いけど浜松工場の見取り図ある?」

大野さん、本当に行くんだ。

「うん、ある。コピーしとくから大野さんは食べてて」

少しでも大野さんには休んでもらわないと

走って資料室に向かって、浜松工場の見取り図をコピーして、ピンクのマーカーで印を付けた。

これだけで足りるかな?
工場までの地図もあった方がいいかな。

地図や浜松工場の写真を用意し終えた頃、大野さんがやってきた。
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