メトロの中は、近過ぎです!
懐かしい名前、原田麻紀さん
通称ハラマキさん
昨年までこの営業3課にいた伊藤チーフのライバル。

同期入社の二人は全く違うタイプで、
伊藤チーフがタイトスカートにピンヒールが似合うキャリアウーマンタイプだとしたら、
ハラマキさんはゆるくウェーブさせた長い髪と、鼻にかかったおっとりした喋り方が特徴のお嫁さんにしたい女タイプ。

そのハラマキさんは役員や本社人事部のお偉いさんまでトリコにしていて、今では本社人事部の影の部長らしい。

別の言い方をすれば、うちの社の大奥総取り締まり。

ハラマキさんに気に入られたら希望の部署に行けるけど、気に入られなかったら裏方仕事ばかり。
特に女子には厳しい。

3課にいた頃の麻紀さんと伊藤チーフとの戦いっぷりは壮絶だったな。

「だいたい中途入社でいきなり課長代理って、その時点でおかしいでしょ?」

伊藤チーフがなんで気づかない?って追い打ちをかける。

ん?なんか見落としてることがあるような

「あ、じゃあ、やっぱり大野さんは……」
ふちがみ はるとくん ではないですね。

「何?」
「なんでもないです」

御曹司なら、ふちがみ な訳ないか
浮かれていた気持ちが、シューと音をたててしぼんでいくみたい。

そっか、別人か。
「似てないよ」と言われれば、そんな気もする。
はるとくんは、もっと可愛いって感じの男の子だったし……
あんな風にモテるタイプでもなかった。

ちょっと寂しいけど、20年前の記憶にはふたをして、仕事に集中するか
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