メトロの中は、近過ぎです!
「さて、俺たちもあとひと頑張りするか」
「はい」

課長の少し疲れた声にみんなが返事する。

窓から見えるビル群の明かりも少なくなった。
外の音も静かになって、オフィスの中はパソコンを叩く音だけが響いていた。

「大野から連絡は?」
「まだです」

北御門さんと伊藤チーフの会話に私のパソコンを打つ手が止まる。

時刻は22:00過ぎ。
浜松にはもう着いた頃
工場の中で迷ったりしてないかな
ちゃんと工場長に会えたのかな

連絡くらいくれてもいいのに……

「女子チームはそろそろいいぞ」

発注作業もあと数件、書類の山も低くなってきた。

けど、もう少しだけやっていこうかな
今にも電話がなるかもしれないし……

「よく頑張ったな。あとは俺たちでやっておくから、明日の朝が勝負だから今日は休んでくれ」
「私はもう少しやってからにします」

課長に応えたのは伊藤チーフ。

「終電なくなるぞ」
「彼に迎えに来てもらうことになっているので…」

微笑んだ伊藤チーフは幸福オーラが漏れ出てて

「いいなー。チーフ羨ましいです」

自然と出た言葉だった。

私もそんな日がくるのだろうか。
相手は?シンさん?
そうなったらいいなとも思うけど、そんなこと望むのはおこがましいかもしれない。
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