メトロの中は、近過ぎです!
お昼休憩も終わって、1階の倉庫で散らかったサンプルを鼻歌交じりに片付けていた時、

「楽しそうだね」

ビクリとして持っていた物を落としてしまった。

全く気配を感じなかった。

「か、川端主任…どうされたんですか?」

ゆっくりと近づいてくる川端主任。
その表情に少し違和感を感じた。

「真帆ちゃん。最近、雰囲気変わったね。可愛くなった」

川端主任はどんどん近づいてきて、あと2歩分の距離まできてようやく立ち止まった。

怖い。

「ありがとうございます。あの、私はもう作業終わったので、あとは、どうぞ…」

早口でそう言って、急いで主任の右側を抜けて倉庫から出ようとした。

なのにガシっと腕を捕まえられてしまった。
途端にバランスを崩して、よろめいたところを川端主任に後ろから抱きすくめられてしまう姿勢になってる。

主任の顔が近い。

「離してください」
「俺のためなんだろう?」
「え?」

私の髪を一束すくって口につける川端主任。

「そんな可愛い格好は、俺のためにしてくれてるんだろう?」

背中に鳥肌が立った。

「違います!」

川端主任を押しのけながら、迫られてたことを思いだした。
いろいろあって忘れてしまって、何も対応してなかった。

そして、シンさんに出会ったのは、川端主任に一緒に帰ろうと迫られた頃だ。

勘違いされている。

そのことを説明したいけど、うまく声が出ない

「照れなくてもいいよ。この前は邪魔が入ったから、今度は二人きりで…ね?」

そう言うと主任はものすごい力で私を壁に押さえつけた。
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