冷たい君の甘い秘密
──それから何も喋らないまま、家の前に到着。
「今日はありがとう!」
マフラーを水瀬くんに渡す。
「別にお前のためじゃない」
「分かってるけど!!」
一言多いよね水瀬くんって!!
そんなことを思いながら家に入ろうとして、それとなく後ろを振り向くと
今来たばかりの道を戻る水瀬くんがいた。
……たしかあたしの家は通り道だって言ってなかったっけ?
……もしかして嘘だったってこと?
つい笑みが零れる。
「水瀬くん!!」
あたしがまだそこにいることに驚いたのか、振り向いた水瀬くんが目を大きく見開く。
「また明日!!」
ありがとう、なんて言ってもきっと素直に受け取らないだろうから。
「近所迷惑」
そんな言葉を残して、水瀬くんは行ってしまったけれど。
今日はちょっとだけ水瀬くんと距離が縮んだような、そんな気がした。