侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「薔薇の事でないとしたら、やっぱりダンスの事で機嫌が悪いんですわね? 出来る限り一生懸命練習したつもりでしたが、そんなに酷かったですか?」

「あぁ最悪だった。僕が恥をかくから、今日はもう他の誰とも踊るんじゃないっ!!」

レイモンド様は、そりゃもう冷たく言い放ちました。

もう少し言い方ってものが……、なんて彼に言っても虚しくなるばかりだと思いますので、止めときます。

『縁があって結婚した』とか何とか言っていましたが、所詮お金目当ての結婚、見た目もダンスも他にも色々、結局レイモンド様の足を引っ張る私の事はお嫌いなのですね。

どうしてだか胸がじくじくと疼きます。

ええ……、私はあくまで穏やかに言って、微笑みました。

その時、
「レイ、ここにいたのね?」
自信ありげな声音で明るく声を掛けて来たのは、まさに大輪の赤い薔薇と言った感じの御令嬢です。

「マリー……」

「結婚おめでとう、奥様も。ところでレイぃ、わたくしと一、二曲良いかしら? 下手な人と踊ってもつまらなくて。ゲストを楽しませるのも、あなたの大事な役目でしょう?」

甘えるような視線を送りながら、いつもそうしているかのようにレイモンド様の指にご自分の指を絡めました。
あぁらまあ……花嫁の目の前で大胆ですこと。
それにしても絵になるお二人、まるでこのカップルが結婚したかのようです。

「侯爵様、行っていらして」

私といてもつまらなそうですし……

にこやかに微笑んだ私の顔を、レイモンド様は暫し無言で無表情に、じぃっとご覧になったのでした。
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