侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
機嫌良さそうに夜空を見上げるアンディー。
隣で私も黒の天幕を見上げれば、剣(つるぎ)のような月と無数に撒き散らされたクリスタルの賑やかさ。
「全然気付いて無かったけど、綺麗ねぇ……」
小さく感嘆の声を上げると、銀の髪の幼馴染は菫の瞳を柔らかく細め、
「セルルの方がずっと綺麗だよ」
大天使かと見まごうばかりの微笑みで言われても、説得力はありません。
嬉しい反面、引き続き愛の告白をされているようで少し困りつつドキドキ。
「セルル、僕が引っ越す時、大きなガラス瓶いっぱいに詰まったクッキーをくれたの覚えてる? 『私が焼いたの、食べて』って泣きながら」
「ええ、覚えてるわ。味は、どうだった?」
『美味しかったよ!』と社交辞令が返ってくるのを疑わず、微笑みながら投げかけた質問に、少し意地悪く笑って
「最悪だったよ。あの後お腹壊したしね……」と。
なんですとー!?
耳を疑い、目も口もまぁるく開いてただ息を飲み、何も言えないでいる私に、アンディーはまたケラケラ笑いながら、
「一枚も食べずに大切に大切にとっておいて、寄宿学校に入ってからも事ある毎に眺めてたんだ。そしたら、いつの間にかクッキーに黒い点点が生えちゃって、最初は削ればなんとかなったんだけど、だんだんと言うか一気にこの星空くらいいっぱいになっちゃって、でも捨てるのなんてゼッタイ嫌だったから、カビ味のクッキーを牛乳で流し込みながら一度に食べたら、その夜熱出して嘔吐してお腹壊して大変だったんだ」
「まぁ……、いくら何でも食べたらダメでしょう……お馬鹿さんねぇ……」
呆れた声を出してから、堪え切れず吹き出してしまいました。
隣で私も黒の天幕を見上げれば、剣(つるぎ)のような月と無数に撒き散らされたクリスタルの賑やかさ。
「全然気付いて無かったけど、綺麗ねぇ……」
小さく感嘆の声を上げると、銀の髪の幼馴染は菫の瞳を柔らかく細め、
「セルルの方がずっと綺麗だよ」
大天使かと見まごうばかりの微笑みで言われても、説得力はありません。
嬉しい反面、引き続き愛の告白をされているようで少し困りつつドキドキ。
「セルル、僕が引っ越す時、大きなガラス瓶いっぱいに詰まったクッキーをくれたの覚えてる? 『私が焼いたの、食べて』って泣きながら」
「ええ、覚えてるわ。味は、どうだった?」
『美味しかったよ!』と社交辞令が返ってくるのを疑わず、微笑みながら投げかけた質問に、少し意地悪く笑って
「最悪だったよ。あの後お腹壊したしね……」と。
なんですとー!?
耳を疑い、目も口もまぁるく開いてただ息を飲み、何も言えないでいる私に、アンディーはまたケラケラ笑いながら、
「一枚も食べずに大切に大切にとっておいて、寄宿学校に入ってからも事ある毎に眺めてたんだ。そしたら、いつの間にかクッキーに黒い点点が生えちゃって、最初は削ればなんとかなったんだけど、だんだんと言うか一気にこの星空くらいいっぱいになっちゃって、でも捨てるのなんてゼッタイ嫌だったから、カビ味のクッキーを牛乳で流し込みながら一度に食べたら、その夜熱出して嘔吐してお腹壊して大変だったんだ」
「まぁ……、いくら何でも食べたらダメでしょう……お馬鹿さんねぇ……」
呆れた声を出してから、堪え切れず吹き出してしまいました。