侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「ウィザーク、朝露から生まれた妖精のように、誠に初々しく美しい奥方であるな」

陛下お世辞がお上手です。
どーせこの人にとって私なんて、朝露飲んでるガマガエルですわ。ゲコゲコ

「お褒めに預かり光栄です」

レイモンド様は、はにかんだように営業スマイルを見せました。

少年のように照れた顔に、胸がきゅんとして高鳴ります。
言葉に実が無い事も、笑顔が演技な事も分かっています。
本心だったらどんなに嬉しいでしょう……。

え、でも嬉しいって……私ったら何を……。それじゃまるで……

「ウィザーク、愛しい奥方にダンスを申し込んでも良いか?」

おどけたような国王陛下のお言葉に、ギャラリー達は『何と名誉な……』と、さざ波が広がる様に騒めいていますが、私の心臓は、それら全てを掻き消すほどの勢いで早鐘を打ち始めました。

そんな私の事などお構いなしに、レイモンド様は恭しくもさらりと、
「もちろんです陛下。さ、エセル」と。

う゛っ……ま、まぁどんなに私のダンスがガッタガタだろうと、君主様からのお申し出とあれば、一介の臣下が断れるわけありませんわよね……。

タラリと背中に嫌な汗を感じますが、エセル当たって砕けろ!! 

自分を叱咤しつつ優雅な生演奏を聴きながら、陛下と手に手を取ってフロアのド真ん中へ。

そして本日二度目の見世物スタート。
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