侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「この人は持参金目当てで妹に近付き、愛していると騙して婚約した。幸せそうな妹にわたくしは何も言えなかった。きっかけはどうであれ夫婦愛が芽生えて欲しいと、それだけを願っておりましたのに……」

だんだん涙声になってゆくのが分かります。
魂のこもった声に、胸を締め付けられるような思いがします。

「この人は、大金持ちの女相続人が現われるやそちらに乗り換え、結婚式の二週間前に、あの心の優しい妹を捨てた」
 
ハリー様は鼻を鳴らし、だから慰謝料は払っただろう! と、誠意は尽くしたと言いわんばかりの口ぶりですが、なんだかなぁ……。
私が口を出す事ではありませんが。

「傷つきボロボロになった妹の心は、慰謝料などではどうにもなりません。一縷の望みをかけ縋った妹に、『見苦しい』『鬱陶しい』と暴言を吐き踏みにじったあなたの事を、わたくしは……わたくしはどうしても許せない!!」

涙を流し訴えるルイーズ様は、いつもの高飛車な彼女とは別人のようです。

妹さんの為にこんな大騒ぎを……。
やり方は大間違いなのでしょうがいじらしさすら感じ、非難する気にはなれません。
幸い怪我をした人はいないようですし。

「あんな豚みたいに太った子に縋られても気持ち悪いだけだ。あまりにもしつこいので『鬱陶しいから近付くな』と言ったんだよ。僕が本気で好きになるはず無いのに」

「なんですって!!」

ルイーズ様の怒気を孕んだ声が飛びました。

ハリー様、いえこの栗毛の小僧(明らかに年上ですが)は、とんでもなく嫌なヤツです。

「事実を言ったまでだ。不幸な結婚をする前にヴィヴィアンと巡り合えて本当に良かった。彼女は君の妹と違って美人だから、ウエディングドレスも似合うだろうし、君みたいにヒステリックな姉上もいない。まさに天の助け……」

「おいハリーやめろっ、さっきから言葉が過ぎるぞ!!」

聞くに堪えないとばかりに、レイモンド様が遮ります。

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