侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「なんだよ偉そうに。こっちは殺されそうになった上に、見世物にされて大恥かかされたんだ、このくらいは言わせろよ」

「いや、君の言葉はあまりに失礼だ。それに今話を聞いた限りでは、君は身勝手だし打算的過ぎる」

「打算的だと?」
栗毛は鼻先で笑って、
「金目当てであのメイヤーの娘と結婚した君にだけは、言われたくないね」
と吐き捨てました。

あのメイヤーの娘って……、明らかな侮蔑にカッチーン、こめかみがピクピクいたします。

栗毛は悪びれもせずせせら笑い、レイモンド様はわなわなと震えながら「なんだと」と。
その瞳には、小さな赤黒い炎が宿っているような。

「君たち二人が愛し合ってるなんて噂、デマだろう?」

ええ、まあそうですけどね……オホホ。

傍に立つレイモンド様は人形のように黙りこくって無表情になりましたが、サファイアの瞳には、先程同様炎が揺らめいているように見えるのです。
栗毛はしてやったりといった顔で、尚も話し続けます。

「税制が変わってから貴族の台所事情は厳しい。名門貴族の邸が売りに出される事も珍しくないこのご時世、持参金目当てで守銭奴の娘を娶ったくせに、偉そうなこと言うなよっ!」

一瞬でしたが私は確かに、レイモンド様の瞳に紅蓮の炎を見たのです。

驚いて立ち尽くす私の目の前で、
「黙れっ、エセルを侮辱するな……僕はエセルを心の底から愛してるっ!! お前みたいなクズ野郎と一緒にするなっ!!」
そう叫びながらハリー様に飛び掛かり、ガツッ! バキッ! 胸ぐらを掴んで殴ったのです。

こんなにも冷静さを失ったレイモンド様を見たのは初めてです。
でも、何だかとても……とても素敵に見えるのです。
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