侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
レイモンド様とハリー様は取っ組み合いへと発展し、もはや騒ぎの中心はルイーズ様ではなくなりました。

いつの間にかルイーズ様の拘束は解かれており、傍に見張り役の男性が一人立っているだけで、その方もレイ&ハリーに気を取られている様子です。

アンディーを含めた数名の紳士が止めに入っていますが、殴り合いの大ゲンカはかなりヒートアップしている為、引き離すのに四苦八苦している模様です。

それにしてもさっきから『堪らなく愛おしい』『恋い焦がれて、やっと妻にできた』他にも色々、とにかくレイモンド様の口から飛び出す耳を疑うような言葉のおかげで、恐らく私いま、蛇イチゴ並みに真っ赤なはずです。

レイモンド様の言葉は、嘘だと分かっています。
本当に私を愛しているのなら、父から私と結婚するように言われた時、不機嫌にはならなかったでしょうし、レース前には私の事を、『子供のようだから嫌い』とハッキリおっしゃっていましたし。
ハリー様にお金目当てと図星をつかれ、過剰に反応しているのかも知れません。

それでも乱れた髪や鋭い眼差し、肩で息をしながら拳を振り上げる姿はとても素敵に見え、零れ落ちる言葉は、泣きそうになるくらい嬉しいのです。

いったい私は、どうしてしまったのでしょうか……。

とその時「ル…、ルイーズ様が!!」
一人の女性が叫んだのです。

皆の視線が一斉に、ルイーズ様へと注がれます。
取り上げられていた銃を奪い返し、こめかみに銃口を向け、今にも引き金を引きそうな雰囲気です。

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