侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「あなたにも沢山迷惑をかけてしまって、ごめんなさいね。他の皆にも私が謝っていたと伝えておいて」

廊下を歩きながらしょんぼり伝えると、リードマンは、ええと頷きクスクス笑って、
「いやぁそれにしても初対面の時は猛獣で、初夜はタヌキ(狸寝入り)ですかぁ……、大奥様もそうとうでしたが、奥様もやるなぁ」
と揶揄うように言って唸り、また笑う。

「だから違うって!」

「分かってますって」

言いながら口元が緩んでいます。
今は正直、そんな表情に救われます。

「リードマン、変な事聞いても良い?」

「良いですよ。なんですか?」

「ええとあの……侯爵様は私の事、どう思っていらっしゃるのかしら?」

「はっ?」一瞬瞠目し吹き出した後、
「気になるんですか? でもそんなのは本人に聞いて下さい。ただ旦那様は聡明で、あらゆる事にとても器用な方です。ではわたくしはこれで」

さらりと言って離れて行く副執事の背をぼんやりと目に映しながら、つまり演技もお上手と言いたいのよね? と心の中で呟いた時、目の前の背中がくるりと振り向いたのです。

「あ、でもあの人、ある方にだけは笑っちゃうほど不器用なんです。次はハードル高いかも知れませんけど、愛称で呼んであげて下さい。それと動物シリーズは、是非子猫ちゃんで。あ、これぜ~ん部独り言ですからお気になさらず」

切れ者副執事は最後ににっこり微笑むと、キョトンとする私のことなどお構いなしに、すたすたと去って行ったのでした。

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