侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「伯爵様、もうこの辺りで大丈夫です……」
少し息を切らせながら、薔薇のアーチの手前でお声がけすると、ルース様は歩みを止めてくるりと振り向き、砂糖菓子のような笑顔を見せて下さいます。
いけないっ、素敵過ぎて目からトロ~リ蕩けてしまいそうです。
「助けて下さって有難うございました。わたくしはこのままお庭を拝見させて頂こうと思いますので、伯爵様はどうかホールへお戻り下さいませ」
私は馴れ馴れしくならないように、儀礼的な言葉を並べました。
屋外照明と月あかりでほんのり明るい庭園は、さやさやそよぐ夜風にのってバラの香りがふんわり漂い、何とも心地の良い空間です。時間をつぶすにはうってつけ。
でもあらら、小首をかしげて一拍置いて少し意地悪く輝く菫色の瞳。
「さっきは令嬢達相手にカッコ良かったよ。君が変わって無くて嬉しかったけど、僕が分からないんだね? つれないなぁ……セ・ル・ルは」
美麗伯爵は甘えるような口調で言って肩をすくめ、私はハッと息を呑み、限界ギリギリまで目を見開きました。
私を『セルル』と呼ぶのは、七歳から二年間だけ通った街の学校で知り合った同級生のアンディーだけです。
「あなた…アンディー…なの!? あの、いえ、ご無礼を申し上げました」
そんなことある筈が無い、でもどうして……
心の中で呟きながら私は一歩下がって頭を下げましたが、顔を上げると目の前の貴公子様は嬉しそうに目を細めたのです。
「やっと分かってくれた? ま、背も伸びたしね、分からなくても仕方ないか……」
少し息を切らせながら、薔薇のアーチの手前でお声がけすると、ルース様は歩みを止めてくるりと振り向き、砂糖菓子のような笑顔を見せて下さいます。
いけないっ、素敵過ぎて目からトロ~リ蕩けてしまいそうです。
「助けて下さって有難うございました。わたくしはこのままお庭を拝見させて頂こうと思いますので、伯爵様はどうかホールへお戻り下さいませ」
私は馴れ馴れしくならないように、儀礼的な言葉を並べました。
屋外照明と月あかりでほんのり明るい庭園は、さやさやそよぐ夜風にのってバラの香りがふんわり漂い、何とも心地の良い空間です。時間をつぶすにはうってつけ。
でもあらら、小首をかしげて一拍置いて少し意地悪く輝く菫色の瞳。
「さっきは令嬢達相手にカッコ良かったよ。君が変わって無くて嬉しかったけど、僕が分からないんだね? つれないなぁ……セ・ル・ルは」
美麗伯爵は甘えるような口調で言って肩をすくめ、私はハッと息を呑み、限界ギリギリまで目を見開きました。
私を『セルル』と呼ぶのは、七歳から二年間だけ通った街の学校で知り合った同級生のアンディーだけです。
「あなた…アンディー…なの!? あの、いえ、ご無礼を申し上げました」
そんなことある筈が無い、でもどうして……
心の中で呟きながら私は一歩下がって頭を下げましたが、顔を上げると目の前の貴公子様は嬉しそうに目を細めたのです。
「やっと分かってくれた? ま、背も伸びたしね、分からなくても仕方ないか……」