侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「ねえセルル、覚えてる? 僕、落第したクラスでも、いっつもテストの成績が最下位だったから、クラスの悪ガキ達に囲まれて『馬鹿』『馬鹿』って言われて、恥ずかしくて悲しくて辛かったけど言い返す事も出来なくて、そしたら君が助けてくれたんだよね」

「ん? そんな事……あった?」

アンディーの成績が悪かった事は覚えています。

彼は私より二年早く入学したのですが、二度落第をした為に彼が十一歳、私が八歳の時に私達は同じクラスで学ぶ事になったのです。

彼は繰り上がりや繰り下がりのある計算が苦手で、算数はそこから先に進めず、また国語の読み書きも新入生レベルでした。

「あったよ。君、八歳とは思えない国語力と巻き舌で捲くし立ててくれたんだ」

「ふ~ん」

「覚えてない? 『あんた達こそ馬鹿じゃないの? 一番がいれば、最後がいるのは当たり前でしょう? アンディーはあんた達と違って、順番何て小さい事は気にしない大物なのよ! ゆっくり回り道しながらおっきなビジョンで色々見てる最中なんだから、そこらの小物がガタガタぬかすんじゃないわよっ! この先アンディー虐めたら、あたしが相手になってやる! ポケットに蛇突っ込んでやるから覚悟しなさいよぉっ!』ってね。あの時は、僕嬉しくて泣いちゃったよ」

あぁあ、ルーカス(父)ばりの口調で捲し立てたわけねぇ……

すっかり忘れていましたが、言われてみれば何となく、特に蛇のあたり。

「あの時から、僕らは仲良くなったんだよね。君は僕にとって初めて出来た友達だったし、はつ…ぃの…だった」

最後の辺りは、お邸から漏れて来る生演奏に掻き消され聞き取れませんでした。

「えっ? あの最後の所が聞こえなかったの、もう一度良いかしら?」

「だから、『君ってば有言実行で、あの後僕を虐めた子のポケットに、小さかったけど本物の蛇突っ込んじゃうんだもん、ビックリしたよ。ま、その後ピタッと虐められなくなったけどね。有難う』って言ったんだよ」

アンディーは悪戯っぽく声を上げて笑いました。

「ま、嘘おっしゃい、さっきのはそんなに長く無かったわ。ふふふっ」

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