侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「それより今夜は飲まないのだな? 先日は楽しそうにルース伯爵と話しながらワインやシードルを飲んでいただろう? 君は彼の事が好きなのか?」

いきなりの変化球に、うぐぐっ、テリーヌが喉に詰まり、咄嗟にワインで流し込む。

「ええ、アンディーは優しいですし大好きですわ」

思わず声が弾んでしまいました。
ふぅんと流し、ワインを呷るレイモンド様。

「ところでルースの事は愛称で呼ぶのだな。何なら私の事も、三ヶ月限定で『レイ』と呼ばせてやっても良いのだぞ」

は?

「ほほほ、今まで通りビジネスライクに『侯爵様』とお呼び致しますわ、侯爵様」

あ、触角眉がぴくんと上がって、また下がった。

「やはり君にとって私は、通りすがりの傲慢なグレートデン(超大型犬)か」

もしや舞踏会の夜、庭園での会話を聞かれていた?
心を落ち着けるために、ワインをコクコク。

あくまで自然にさりげなく子猫の様に小首をかしげ、
「どうしてそんな風におっしゃいますの?」
にゃおん

「ただ何となく思っただけだ」

嘘くさ~い笑みを浮かべ、
「そうですか、ほほほ」ほんとうにぃぃ?

「ところでルース伯爵の出自については、結構有名な話だから知っていたが、出来が悪かったとか落第とかは意外だったよ、ははは」
さりげなく言って黒い笑顔。

か、完全に聞かれてたーっ! 

「令嬢方にしつこくされて庭園に逃げたら、たまたま君達がいて会話が聞こえてきたのだよ。それにしても、この国で一番人気のある独身の青年貴族のこの私を犬とはね、ははは」

「あれは言葉の綾で……」

令嬢達の見掛け倒し、根性無しー!
ハーレムから王様逃がしちゃダメだってー! 

助けてバッカス! 

かくなる上は、じゃんじゃん飲んでハイになるしかありません!! 

ええいゴクゴク



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