侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
アルコールが回るにつれ、私の心の枷はどんどん外れていったのでした。

真っ赤なロブスターを目にした途端、先日舞踏会へ行く車中で交わした会話を思い出し、
「これってアハハ、わたくしったら共喰いですわね……ふふふふふ」
と、思わず声を上げて笑ってしまいました。

高級店に相応しいとは言えない品の無い笑い方に、レイモンド様は嫌な顔をするかと思いきや、あらあら「やっと笑ったな」と、何だかちょっと嬉しそう。

えっと小さく声を上げるも、彼は澄まし顔でワインのテイスティング中。
ソムリエ曰く、そのワインはロブスターとのマリアージュが絶妙なんだとか。

「ああ、良いね」
美麗侯爵、ソムリエにニコッ

見ているだけなら、本当に溜め息が出るくらい絵になる人です。

切れ長の目、なんて素敵なサファイアブルー、思わずうっとり見とれていたら、ととと、目が合いました。
嘘くさく微笑んでサッと目を逸らす私。

「君は私に対しては殆ど笑いかけないからね。笑っても、今みたいに大抵インチキ臭い笑顔だし」

「まぁ、インチキだなんて……ふふふ、確かにそうですわね」

また笑えて来ました。ふふふ

「君っ、否定しないのか!?」

「しませんわ、その通りですもの。三ヶ月の猶予期間中、わたくしは父を大人しくさせておく為に侯爵様に協力しますけれど、わたくし達の間に笑顔なんて糸屑ほども必要ありませんでしょう?」

「糸…屑!?」

あ、触角眉がぴぃんとつり上がりましたが、気付かない振りでロブスターをパクリ。

甘いっ、美味しいっ!!
色々フリーダムになった私は、味覚も復活したようです。

グラスを優しく揺さぶり、輝く程に澄んだ美貌のお友達を目覚めさせる。ゴクッ
きりっと辛くて確かに絶妙のマリアージュ! 

コクリコクリコクリ
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