侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
その後も理由を作っては、ちょくちょくメイヤー邸を訪ねたが、君は僕を見ても頬を赤らめるでも無ければ、しなを作ってすり寄って来るわけでも無く、むしろ拍子抜けするほど素っ気無かった。
それに小綺麗な服を着ている時でも、相変わらず化粧っけはなく、髪もおさげかひっつめるかで、僕に特別な感情を抱いていないのは明らかだった。
僕の方はと言えば訪問の回を重ねるごとに、君がいれば心が躍り目で姿を追い、いなければ会いたくてたまらない気持ちが募っていった。
さすがにこの頃はもう気付いていた、雨あられの如く降ってくる縁談を断り続けて来た僕が、野薔薇のような君に恋い焦がれている事を。
そしてミシェルが逃げ出した後、メイヤー殿から
『ではエセルを、侯爵様の花嫁にして下さい』
と言われた時は、世界中の幸運を手に入れたくらい嬉しかった反面、メイヤー殿の良いように操られているような気がしてならず、また、君も本当は強かに侯爵夫人の座を狙っていたのではないかと疑心暗鬼になり、ついつい悪態をついてしまった。
せっかくのチャンスだったのに、あああくそっ……悔やんでも悔やみきれない。
返り討ちに遭い君の毒舌に散々打ちのめされたが、その芯の強さが気に入って、僕は益々恋の深みにはまってしまった。
君に触れたい、キスして抱きしめたい。
僕に微笑みかけて、僕を好きになって、どうか僕の妻になって……。
そう思っていた矢先、ルース伯爵が、あいつが君の瞼にキスしやがった。
君は嫌がる素振りすら見せず、逆に二人は恋人同士のように甘いムードで、僕の胸は嫉妬で焼け焦げそうだった。
それから二週間、僕は腹を立てていた。いや、子供のように拗ねていた。
メイヤー殿から頼まれるか、あるいは君から会いたいと言ってくるまでは、絶対に会ってやるものか! と。
しかし虚しく時は過ぎてゆき、結局会いたい気持ちを抑え切れなくなり君を食事に誘ったが、君はまたしても僕に暴言を吐いた。
僕とは二度と食事をしたくない?
まったく、誰のせいで食べられなかったと思ってる……。
人の気も知らないで、本当に酷いことを言うものだ。
ただでさえ君とのデートが嬉しくて胸がいっぱいなのに、今夜の君は、フンワリおろした巻き髪も、ひらひらしたオレンジ色のワンピースも凄く似合っていて、天使のように可愛くて、しらふでは正視できないほどだ。
僕はガチガチに緊張して、食事が喉を通らなかったというのに。
でも、どんなに悪態を吐かれても君と一緒にいたいのだから、まったく……我ながら情けなくて笑えてくるよ。
そう言えば、母の命日なんて嘘なんだ。
だってああでも言わないと、君は帰っちゃうから……
僕の母は外国で楽しく暮らしているよ。
母性が全く無い人だから、僕にとって母親は存在しないも同然だけど、死んではいないんだ。
ねえエセル、どうしたら僕を好きになってくれる?
君に会えないと、息もできないくらい苦しくて恋しくて、仕方が無いんだ……
それに小綺麗な服を着ている時でも、相変わらず化粧っけはなく、髪もおさげかひっつめるかで、僕に特別な感情を抱いていないのは明らかだった。
僕の方はと言えば訪問の回を重ねるごとに、君がいれば心が躍り目で姿を追い、いなければ会いたくてたまらない気持ちが募っていった。
さすがにこの頃はもう気付いていた、雨あられの如く降ってくる縁談を断り続けて来た僕が、野薔薇のような君に恋い焦がれている事を。
そしてミシェルが逃げ出した後、メイヤー殿から
『ではエセルを、侯爵様の花嫁にして下さい』
と言われた時は、世界中の幸運を手に入れたくらい嬉しかった反面、メイヤー殿の良いように操られているような気がしてならず、また、君も本当は強かに侯爵夫人の座を狙っていたのではないかと疑心暗鬼になり、ついつい悪態をついてしまった。
せっかくのチャンスだったのに、あああくそっ……悔やんでも悔やみきれない。
返り討ちに遭い君の毒舌に散々打ちのめされたが、その芯の強さが気に入って、僕は益々恋の深みにはまってしまった。
君に触れたい、キスして抱きしめたい。
僕に微笑みかけて、僕を好きになって、どうか僕の妻になって……。
そう思っていた矢先、ルース伯爵が、あいつが君の瞼にキスしやがった。
君は嫌がる素振りすら見せず、逆に二人は恋人同士のように甘いムードで、僕の胸は嫉妬で焼け焦げそうだった。
それから二週間、僕は腹を立てていた。いや、子供のように拗ねていた。
メイヤー殿から頼まれるか、あるいは君から会いたいと言ってくるまでは、絶対に会ってやるものか! と。
しかし虚しく時は過ぎてゆき、結局会いたい気持ちを抑え切れなくなり君を食事に誘ったが、君はまたしても僕に暴言を吐いた。
僕とは二度と食事をしたくない?
まったく、誰のせいで食べられなかったと思ってる……。
人の気も知らないで、本当に酷いことを言うものだ。
ただでさえ君とのデートが嬉しくて胸がいっぱいなのに、今夜の君は、フンワリおろした巻き髪も、ひらひらしたオレンジ色のワンピースも凄く似合っていて、天使のように可愛くて、しらふでは正視できないほどだ。
僕はガチガチに緊張して、食事が喉を通らなかったというのに。
でも、どんなに悪態を吐かれても君と一緒にいたいのだから、まったく……我ながら情けなくて笑えてくるよ。
そう言えば、母の命日なんて嘘なんだ。
だってああでも言わないと、君は帰っちゃうから……
僕の母は外国で楽しく暮らしているよ。
母性が全く無い人だから、僕にとって母親は存在しないも同然だけど、死んではいないんだ。
ねえエセル、どうしたら僕を好きになってくれる?
君に会えないと、息もできないくらい苦しくて恋しくて、仕方が無いんだ……