侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
こ、この笑顔は私にとって、とってもまず~い事をおっしゃる前兆です。

「君を風呂に入れるようにメイド達に託したが、君、服を脱がせる前からライオンみたいに吠えまくって暴れまくって、結局女性の手には負えないと言われ、仕方が無いからメイド達立ち合いのもと、僕が風呂に入れてやったんだ」

一瞬頭真っ白、口あんぐり。最大限に見開いた目のふちから、目の玉がぽろっと落っこちそうです。

「え゛ぇぇ、お風呂を断念して頂くわけには、まいりませんでしたのぉーーー!?」

「髪の毛まで汚物まみれだったんだぞ!? 逐一君に了承を得ながら脱がせて洗って」

「りょ、了承って、わたくしOKしちゃったんですか?」

「ああ、僕の言うことは比較的よく聞いてね。いつもそうだと有り難いのだが」

レンガで殴られたような衝撃が走り思わず頭を抱えこむと、「大丈夫だよエセル」と笑みを含んだ声がふってきました。

大丈夫って何? 見てないよとか? それでも死ぬほど恥ずかしいけど。

私がゆっくり顔を上げると、美麗侯爵は瞳を覗き込みながら、
「僕は女性の裸なんて見飽きてるからね」
と、いけしゃあしゃあとのたもうたのです。

全然大丈夫じゃないからーっ!! 口から魂抜け出しそうです。

余りにも恥ずかしい話を聞きながら、「でも、でも……」と唇は勝手に動きますが、思考は殆どフリーズ中。

「仮に風呂に入いれないにしても、体を拭かない、着替えさせないなんて選択肢は無かったし、結局僕がやらなければどうにもならなかったんだ。それとも、女性の体に興味津々の若い下僕達に頼んだ方が良かったかい? 因みに僕は君の歯も磨いてやったぞ。まあその頃には、子猫のように僕に懐いて大人しくなっていたがな……」

「なついてませんっ!」

クスリと笑うレイモンド様。
笑えませんてーーー!!

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