侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
頭を左右に振り、
「無理です。お断りさせて頂きます」

「何だとっ!? 僕は君をシンデレラクラスの玉の輿に乗せてやると言ってるんだぞ! 断るなんてあり得ないだろう!?」

「お言葉ですが侯爵様、わたくしは別に玉の輿に乗りたいなんて思っていませんの……。結婚するなら、オー・ヘンリーの『賢者の贈り物』のように、愛し合って敬い合える方としたいのです」

数秒の間を置いて
「あぁあ、クリスマスプレゼントに、夫は大切な懐中時計を売って妻の櫛を買い、妻は自慢の美しい髪を売って、夫の時計に付ける鎖を買うって話だな? ふぅんなるほどね、君は貧乏な男と結婚したいのか、変わってるなぁ……」

「え゛っ!?」
『愛し合って敬い合える』は完全スルーで、どうしてそんな解釈になる?  
だいたい『結婚するなら貧乏な男性が良いわ~(うふっ)』なんて普通に考えたっておかしいでしょー!!

開いた口が塞がらない私をよそに、レイモンド様は顎に手をやって何やら考えていましたが、顔を上げ静かにこう言ったのです。

「僕は貧乏では無いが、まあ一時的とは言え君の父上に借金をしている身だ、君の条件に合うだろう?」

この人、ダイヤモンド級のプライドが邪魔をして断られた事を受け入れられないのか、それとも本当に気付いて無いのか、いずれにしても困るんだけどぉ!

ええい、ここは直球勝負! 

「あの侯爵様、お気遣いには心から、本当に心から感謝申し上げていますが、結婚は責任を取るとか義務感でするものでは無く、愛情や尊敬に基くものだと思います。わたくし達の間には、そういった大切なものがありませんもの、このお話は無かった事にさせて下さいませ」

キラッキラのプライドを傷つけないように意識して微笑みながら言ったつもりですが、レイモンド様は私の言葉を聞くや、ブツブツと独り言をおっしゃいました。

「僕はブツブツブツ(こんなに苦しいのに)、君はブツブツブツ(無慈悲に拒絶する)……のか」

うっ、触角眉が跳ね上がり、こめかみもちょっとピクリとしました。

どうやらとても怒らせてしまった模様です。
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