侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「あの…侯爵様、わたくしはもうおいとましますので着る物をお借りしたいのですが、メイドを呼んで頂けますか?」
わだかまりを残したくは無いので、出来るだけ穏やかに言いましたが、レイモンド様は氷のような視線を向け、「エセル、そんなに僕の事が嫌いか?」と、絞り出すような声でおっしゃったのです。
「え? あ…の」
「僕と結婚するくらいなら、未婚女性の名誉を捨てても構わないと思う程に。三ケ月のうちの数時間を、共に過ごすのさえ耐えられないという程に……嫌いなのか?」
怒っていらっしゃるだけでは無く、声と表情が寂しそうなのは気のせいでしょうか?
「侯爵様、そういう事では」
話している途中、私はいきなりレイモンド様に手首を掴まれ強い力で引き寄せられ、熱を帯び仄かにシトラスの香りがする胸に倒れ込みました。
「こ、侯爵様……、お放し下さいませ」
何が起きたのか分からず、咄嗟に厚い胸板を押しやって逃れようとしましたが、レイモンド様は更に拘束する力を強めたのです。
わだかまりを残したくは無いので、出来るだけ穏やかに言いましたが、レイモンド様は氷のような視線を向け、「エセル、そんなに僕の事が嫌いか?」と、絞り出すような声でおっしゃったのです。
「え? あ…の」
「僕と結婚するくらいなら、未婚女性の名誉を捨てても構わないと思う程に。三ケ月のうちの数時間を、共に過ごすのさえ耐えられないという程に……嫌いなのか?」
怒っていらっしゃるだけでは無く、声と表情が寂しそうなのは気のせいでしょうか?
「侯爵様、そういう事では」
話している途中、私はいきなりレイモンド様に手首を掴まれ強い力で引き寄せられ、熱を帯び仄かにシトラスの香りがする胸に倒れ込みました。
「こ、侯爵様……、お放し下さいませ」
何が起きたのか分からず、咄嗟に厚い胸板を押しやって逃れようとしましたが、レイモンド様は更に拘束する力を強めたのです。