侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
レイモンドの独り言
エセル、君は芯は強いけど、やっぱり非力な女の子だね。
手首を掴んでちょっと引っ張っただけなのに、簡単に倒れ込んで来て。

恐れと驚きが綯い交ぜになったような表情をしながら、僕の胸板を押しやって逃れようとするけれど、馬鹿だなぁ、そんな力じゃ何の抵抗にもならないって。

僕は華奢でしなやかな身体をぎゅっと抱きしめた。

それにしても同じ石鹸を使ったのに、どうしてこんなに優しくて甘い匂いがするんだろう? 
本当に堪らなく良い香りだ……

おっと今度はカタカタ震え始めた。
まったくなんて可愛いんだよ。

守ってやりたい気持ちと、めちゃくちゃにして穢してしまいたい気持ちが僕の中でせめぎ合う。
そう昨夜のように。
結局我慢出来ずに君を穢してしまったけど、君と一つになれたんだ、僕にとってはこの身がうち震えるくらい、幸せなひと時だったよ。

既成事実を作ったのに、それでも君は僕を拒むんだね?

「エセル……」

名前を呼ぶと、瞳に涙を滲ませながら上を向いて、僕を見つめてくる。
もちろん気が強いところも大好きだけど、こう言う頼りなげな君も堪らなく愛おしい。

どうしてこんな事するの? 
君の潤んだ瞳が僕に問いかけてくるけれど、そんなの好きだからに決まってるだろう?
 
放してほしいんだね? 

絶対に放すもんか……

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