侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
そう言えば、怖~い見かけによらず人懐っこく、もの凄ぉく甘えん坊さんの本物のグレートデンも、怒られるとこんな風に寂しい目をします。
レイモンド様と超大型犬がダブって見えます。

それにしても、な、なんで? 
これじゃぁまるで私がこの人を虐めたみたいじゃないですか? 
令嬢達に吊るし上げられてたのは、私ですよ私!
心の中でキャンキャン文句を言っていると、
「レースに出場なさる皆様は、お集まりくださーい!!」
テントの方からレーススタッフの大きな声が聞こえてきたのでした。 

とその時、
「あははははは……!!」
黄昏ていた筈のレイモンド様が、片手を額に片手をお腹に当てながら、いきなり高笑いし始めました。

「エセル、僕が放っておいたから本格的に拗ねちゃったんだね!? ごめんよ……あはははは」

あっれー? 空耳が聞こえる……って違うっ、この人また変なこと言い始めたっ!! 
しかも体全体、キラッキラしたものに包まれて。
あ、このオーラ状の発光物は、多分宝石のようなプライドです!

虚構が真実にとってかわる前に、さっさと立ち去りましょう……。

薄笑いを浮かべ、「それではわたくしお暇しますわね」と小声で言いつつその場から離れようとしましたが、またしても手首をがしっと掴まれました! 
くぅぅ、学習しなさいエセルぅぅ!! 

その後も、離して! 離して! と目で訴えながら一生懸命手を引っ張るも、レイモンド様の力が強すぎて、何の抵抗にもなりません。

レイモンド様は令嬢たちに向かって柔らかく微笑み、
「麗しい皆さん、私はエセル嬢にもう少し話がありますので、どうぞテントへ戻って下さい。あぁあそうだ……、後ほどエセル嬢も席に戻りますが、彼女は私にとって特別なひとです。彼女への無礼は私への無礼とお含みおき下さい」
と、凄いことをさらりとのたもうたのです。
頭がくらくら致します。

こらレイモンドっ! 
『特別なひと』とか言ったらまた誤解されて、めんどくさい事になるでしょーが!
変な気遣い要りませんてー。

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