侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?

レイモンドsaido2

大っ嫌いだとっ? あばらから手を突っ込まれて心臓を握りつぶされたような感覚に陥る。
君は僕を殺す気か!?

それに僕はあのキスで、身も心も蕩けてしまいそうだったのに、君は……
ナメクジってなんだよっ!! 
とける繋がりかっ? ああああくそっ!

さっき令嬢達を帰したのだって、レースの前に君にキスしたかったからなのに。
エセル、ホントにひどいよっ……。

「セルル!! セルル!!」

ああああ……ったく、今度は一番邪魔な奴がこっちに来やがる!!  
頭を掻きむしりたくなる思いの中、僕はエセルの手首から手を離し、そっと手を握った。

ほら今だって、拒絶されない事にホッとしている。

君といると顔色を窺ってばかりいるし、君に言葉や仕草で拒絶されるたびに、立ち直れない気持ちになる。
立場が弱すぎて我ながら情けないけど、愛してるから、仕方が無いから折れてやる。
君の事が愛おし過ぎて、僕は頭がおかしくなりそうだ……。

「セルル、レースが始まるよ、さ、行こう?」

ヤツはそう言って、僕がエセルと繋いでいる手を憮然とした表情でチラリと見てから、彼女のもう片方の手を掴み、僕に棘のある視線を向けた。

「侯爵、彼女のお相手を有り難うございました」

あぁあ、僕が親切心からノーティア伯爵へ挨拶に行けって言ったんじゃないって、こいつも気付いたんだな。
それにしても、なんでお前に『有り難う』なんて言われなきゃならないんだよ! 
エセルはお前のものじゃない、僕のものだ!!

などと考えながらうっかり手の力を緩めた隙に、
「侯爵様、レース頑張って下さいませね」

エセルは柔らかく微笑みながら、するりと手を引き抜いた。
ズキリっ

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