侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
ったく『嫌い』だの『ナメクジ』だの言われて、どうやってがんばれって言うんだよ!! 
「落馬して下さいませね」の間違いだろー! 
この意地悪な小悪魔め!

僕の胸の痛みなどお構いなしに、仲良さそうに肩を寄せ合って去って行く二人。
気が狂いそうだ……

佇んでいるわけにもいかず、僕も歩き出す。
出たくないけどレースにも出ないといけない。
図らずも、前を行く2人の会話が聞こえてくる。

「フレッドに優勝カップを見せてあげる約束だから、頑張らないと」

お前に優勝なんてさせて堪るか!

「ええ、応援してるわね、頑張って」 
 
「セルル、さっきはうやむやになっちゃったけど、僕が優勝したら僕のお嫁さんになって……」

こいつ、どさくさに紛れて言いやがった。

「えっ? アンディー!? あの…………、良く考えさせて」

僕のプロポーズは即座に手加減なしで断ったくせに、なんでそいつには、ちょっとはにかんで考えさせてなんだよ、あああああもうっ!!

「もちろん、でもまずは優勝しなきゃいけないね。セルル、元気が出るおまじないして?」

「おまじない?」

「うん、これ……」

言いながら、やつは僕に見せつけるようにエセルを引き寄せ抱き締めると、彼女の顎を掬って愛らしい唇を食むように口付けた。

こいつ、殺してやるーーーーーっ!!
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