侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
コブラが鎌首をもたげるようにクッと顎を上げ、ほほほと白々しく笑いながら口を開く。
「予想を裏切って申し訳ございませんが、わたくしも今初めて聞きましたのよ、侯爵様。本題に入る前にはっきり申し上げますけれど、人を馬鹿にするのも父を罵倒するのも、どうかおやめ下さいませ。そうでないとわたくしも、どこぞの賭博や買い物狂いの馬鹿娘の事をシロアリと言ってしまいそうですし、そのお」
「なんだとっ!!」
話しの途中で素っ頓狂な声を上げる美麗侯爵……のことは完全スルーで、先を急ぎます。
「そのお兄様の事は、ボンクラ侯爵と呼んでしまいそうですもの」
「ボ、ボンクラだと? 黙って聞い」
「あら、ネクラの方がよろしかったですか?」
と、さらりと遮って差し上げました。
綺麗な顔に怒りの炎がメッラメラです。
だからと言って怯むつもりは小指の先ほどもございません。シャー(コブラの威嚇音)
「あ~ら、ご気分を害されまして? ほほほ、自分が見下されるのも、身内を悪しざまに言われるのもお厭なものでございましょう?」
「……」
「まあ百万歩譲って自分のことは良いとしても、肉親を侮辱されるのは我慢なりません。貴族も平民も、肉親に対する情に変わりなんてありませんし、マナー以前の問題です。思い上がるのも大概になさいませ、侯爵様」
「君っ……」
と、眉を跳ね上げておっしゃいましたが、もちろんガン無視。口なんか挟ませるもんですか!!
「では本題、わたくしが貴方様を『罠に嵌めるつもりで舌なめずり』ですかぁ?」
おーーっほっほ、おーーっほっほ!!
手の甲を口に当て、斜め四十五度を見ながら声高らかに笑います。
「ホぉント面白いことおっしゃるから、笑い過ぎて脇腹が痛いですわ……。自己評価エベレスト級ですわね? でもきっと、貴方の頭のてっぺんから爪先まで何処をどう切り刻んでも、魅力なんて1グラムたりとも見つかりませんわよ」
レイモンド様は、サファイアの目を零れ落ちんばかりに見開きながら、金魚のように口をパクパク、言葉にならない息だけの声を漏らしています。
さあエセル、もうひと押し。
「わたくしとの結婚話なんて、もちかけられるだけでも侯爵様にとっては屈辱的なようですが、気が合いますわねぇ、こちらも貴方と結婚なんて苦役は真っ平ご免ですの。お父様、借金の件はくれぐれもまともな思考回路で、わたくしに迷惑のかからない形で解決なさって下さいませ。お話しは以上です」
父もレイモンド様も言葉が出ないと言った雰囲気で、口の悪い小娘をただただ見つめています。
私は勢いですくっと立ち上がり、「では、ごきげんよう侯爵様」と定石通りお辞儀をして、そそくさと応接室を後にしました。
恐らくレイモンド様がお帰りになったあと、カンカンに怒った父に、出来損ないだ何だかんだと罵倒されるに違いありませんが、ええーい、ここまで来たらどうにでもなれ!!
だからって……一週間後、舞踏会へ向かう車の中、何故か私の隣には神経質そうに唇を引き結んだレイモンド様がお座りになっているのでした。
「予想を裏切って申し訳ございませんが、わたくしも今初めて聞きましたのよ、侯爵様。本題に入る前にはっきり申し上げますけれど、人を馬鹿にするのも父を罵倒するのも、どうかおやめ下さいませ。そうでないとわたくしも、どこぞの賭博や買い物狂いの馬鹿娘の事をシロアリと言ってしまいそうですし、そのお」
「なんだとっ!!」
話しの途中で素っ頓狂な声を上げる美麗侯爵……のことは完全スルーで、先を急ぎます。
「そのお兄様の事は、ボンクラ侯爵と呼んでしまいそうですもの」
「ボ、ボンクラだと? 黙って聞い」
「あら、ネクラの方がよろしかったですか?」
と、さらりと遮って差し上げました。
綺麗な顔に怒りの炎がメッラメラです。
だからと言って怯むつもりは小指の先ほどもございません。シャー(コブラの威嚇音)
「あ~ら、ご気分を害されまして? ほほほ、自分が見下されるのも、身内を悪しざまに言われるのもお厭なものでございましょう?」
「……」
「まあ百万歩譲って自分のことは良いとしても、肉親を侮辱されるのは我慢なりません。貴族も平民も、肉親に対する情に変わりなんてありませんし、マナー以前の問題です。思い上がるのも大概になさいませ、侯爵様」
「君っ……」
と、眉を跳ね上げておっしゃいましたが、もちろんガン無視。口なんか挟ませるもんですか!!
「では本題、わたくしが貴方様を『罠に嵌めるつもりで舌なめずり』ですかぁ?」
おーーっほっほ、おーーっほっほ!!
手の甲を口に当て、斜め四十五度を見ながら声高らかに笑います。
「ホぉント面白いことおっしゃるから、笑い過ぎて脇腹が痛いですわ……。自己評価エベレスト級ですわね? でもきっと、貴方の頭のてっぺんから爪先まで何処をどう切り刻んでも、魅力なんて1グラムたりとも見つかりませんわよ」
レイモンド様は、サファイアの目を零れ落ちんばかりに見開きながら、金魚のように口をパクパク、言葉にならない息だけの声を漏らしています。
さあエセル、もうひと押し。
「わたくしとの結婚話なんて、もちかけられるだけでも侯爵様にとっては屈辱的なようですが、気が合いますわねぇ、こちらも貴方と結婚なんて苦役は真っ平ご免ですの。お父様、借金の件はくれぐれもまともな思考回路で、わたくしに迷惑のかからない形で解決なさって下さいませ。お話しは以上です」
父もレイモンド様も言葉が出ないと言った雰囲気で、口の悪い小娘をただただ見つめています。
私は勢いですくっと立ち上がり、「では、ごきげんよう侯爵様」と定石通りお辞儀をして、そそくさと応接室を後にしました。
恐らくレイモンド様がお帰りになったあと、カンカンに怒った父に、出来損ないだ何だかんだと罵倒されるに違いありませんが、ええーい、ここまで来たらどうにでもなれ!!
だからって……一週間後、舞踏会へ向かう車の中、何故か私の隣には神経質そうに唇を引き結んだレイモンド様がお座りになっているのでした。