侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
ゲームセット!!
そして私は病院のベッドで目を覚ましました。

はてこの状況は……おおおーっ、そうだったわ! 
レイモンド劇場で公開プロポーズのクライマックスに気絶しちゃったのよね。
それにしても私からの返事待ち、『結婚できません』なんて言おうものなら犯罪者扱いされかねないあの状況を、我ながらよく切り抜けたわ、くくく。
なんてほくそ笑んでいると、あらお父様いらっしゃってたのね。

ベッドサイドの椅子に座り私に笑顔を向けて来るお父様、愛娘が目覚めた事に安堵し思わず笑みがこぼれたとかではなく、黒い笑顔です。

イヤぁな予感が致します。
そしてそういう予感ほど、良~く当たるものなのです。

「エセル、でかしたぞ!!」

ん? 
わけも分からず小首をかしげる私。

「貧血で倒れたから医者が血液検査したんだが、お前、腹に赤ん坊がいるそうだ!!」

「え゛? えええええーーーっ!!」

ショッキングな言葉が耳から入って目へ向かい、眼球がかなりの勢いで飛び出しました。

「流石は俺の娘、やる時はやるもんだ! 相手は侯爵、伯爵どっちだ?」

嬉々として唸りながら話す父、言葉のチョイスが恥ずかし過ぎます。
誰かこの人埋めてちゃって下さい!

口をあんぐり開けたまま言葉が出ないでいる私を見つめながら、お父様は尚も粗野に楽しそうに「金の髪と銀の髪、どっちの子だ??」と。

童話の『金の斧と銀の斧』みたいな言い方しないで下さい! 
思わず正直に話しちゃいそうになったじゃありませんか!

危ない危ない、目の前にいるのは、湖から姿を現した心優しき女神様ではありません。

「お父様、私3週間ほど前に不思議な夢を見ましたの。女神さまが光の玉を手に現れて、『そなたにこれを授けよう』とおっしゃったのです。そうしたら、何とその玉が私のお腹に飛び込んで……。きっと私は神様のお子を身籠ったのです」

咄嗟に思い付いた処女受胎でしたが、自分で言ってて嫌になるくらい、いくらなんでも苦し過ぎます。

「あぁあ、俺もかみ様は大好きだし信じてるぞ。ただし、財布に入れて持ち歩けて、何でも買える便利な紙様の事だがな。この世に悪魔はいても神なんぞいねえ、寝言言ってねえで、とっとと父親の名前を言え!!」

ひぃぃ、この罰当たりがぁぁー! 
って私もですが……。

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