侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
考え事をしながら指輪の交換、スルスルっと……あ、嵌っちゃった。
微笑むレイモンド様に、ベール越しに引き攣った笑みで返します。

今度は私からレイモンド様に。
それにしてもなんて綺麗な指なんでしょう……。 

「それでは誓いのキスを」

あ、やっぱりするのよね……。

ベールを上げて下さるレイモンド様からは、仄かにシトラスの香りが漂い、とくんと心臓が跳ねました。
俯き加減の私に美麗な顔が近づきます。
チラリと見えた吸い込まれそうなサファイアブルーは、癪ですがいつ見ても素敵です。

そんな事を考えていると、あ、いきなり唇が触れました。
触れてます触れてます、まだまだ触れてます。さらにさらに………………。

ん? レイモンド、長くないかい? ん? あれれれ? まだ? いつまでやるの? ん? んんん? 

大司教様が咳払いされました。客席からも笑い声が漏れています。
やっと離れた。

「ここに二人を夫婦とする!」

大司教様の厳かなるお声と共に愛ある結婚の夢は儚く散り、私は第十一代ウィザーク侯爵夫人エセルとなったのでした。
< 82 / 153 >

この作品をシェア

pagetop